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フィリピンの書類は、なぜこんなに手間や時間がかかるのかという疑問

――フィリピンの公的書類は、なぜこんなに時間がかかるのか――


結論から言うと、フィリピンの書類取得に時間がかかるのは「役所が遅いから」だけではなく、仕組みそのものが


・戸籍にあたる情報が二段構造になっている


・DFA(外務省)のアポスティーユ認証が別レイヤーで必要


・最後に国際配送という不確実なステップが乗る


という三重苦になっているからです。ここを、日本人にイメージしやすい形でストーリーとして説明します。




――日本とまったく違う「戸籍の二段構造」――


日本では、市区町村ごとに戸籍があり、そこから直接「戸籍謄本」や「住民票」が出ます。多くの人にとっては「市役所に行けば、その場で数十分で出てくるもの」という感覚だと思います。


一方フィリピンでは、スタート地点が二段構造です。


まず各市町村のローカル民事登録事務所(Local Civil Registry Office)が出生・婚姻・死亡などを紙台帳や古いシステムで登録します。


その後、その情報がフィリピン統計庁(PSA)に送られ、全国のデータベースに集約され、PSA名義の Birth Certificate や Marriage Certificate として発行されます。


つまり、ローカル役所の記録→ PSA側での取り込み・整理→ PSAが証明書を発行

という二段階を踏む構造になっているため、日本のような「市役所ワンストップ」とは根本的に違います。この時点で、すでに処理が遅くなりやすい前提を抱えています。



――「データがきれいではない」ことによる人手作業――


さらにやっかいなのが、長年「紙+タイプライター」で運用してきた歴史の影響です。


名前のスペルが少しずつ違う旧姓やミドルネームの扱いが揺れている出生地や生年月日の表記がバラバラ地方の古い記録が、そもそもPSA側に完全移行されていない


こういった「揺れ」や「抜け」がそこら中に残っています。


そのため、担当者はシステムの自動検索だけでは済まず、紙の記録と画面を見比べて「この人で合っているか」を人間の目で判断しなければいけない場面が多くなります。


日本なら数秒で終わる照合が、フィリピンでは「人の目と手」を使った確認作業になる。この「必ず人間が間に入る構造」が、数週間〜数か月という遅延を生みやすい土台になっています。


――DFAアポスティーユという、もう一段上のハードル――


日本で使う書類は、PSAの証明書だけでは足りず、多くの場合「DFA(外務省)のアポスティーユ認証」が必要です。


流れとしては、PSAが証明書を発行するその原本を持って(または経由させて)DFAに提出するDFAが本物かどうかを確認し、アポスティーユを付けるそこで初めて「海外でも使える公文書」として完成するという形になります。


DFAには、PSAの書類だけでなく、学歴証明、裁判所の書類、警察証明などさまざまな種類の書類が全国から集まります。


窓口や人員には限りがある一方で、処理すべき書類の範囲は広いため、予約待ちや書類の山がどうしても発生します。


結果として、PSAの段階で時間がかかるそのあとDFAの段階でも時間がかかる

という「詰まりやすいステップ」が直列に二つ並んだ状態になっています。


――国際配送という「最後の不確実性」――


PSAとDFAの処理が終わったとしても、そこから日本に届くまでに、もう一つ大きな山があります。


郵便(PhilPost)を使うと6〜8週間かかることも珍しくなく、途中で追跡情報が途切れたり、最悪紛失するリスクもあります。


どの配送会社を選ぶのか、その選択によっても届くまでの納期や金額が大幅に変わってきてしまいます。


あとから、この配送会社に頼むんじゃなかったということも出てきます。


――なぜ「4週間〜数か月」が普通になってしまうのか――


ここまでを一本の流れとして見ると、フィリピンの公的書類は


ローカル役所の記録→ PSAの全国データベース→ DFAによるアポスティーユ→ フィリピン国内での受け取り→ 日本への国際配送


という、長いリレーで動いていることが分かります。


どこか一か所でもトラブルや遅延が起きると、その分全体のスケジュールが押していきます。


データの揺れ人手作業人員不足オンライン移行がまだ途中国内・国際物流の制約


こういった「遅くなりやすい要素」が何層にも重なっているため、

3〜4週間で届けばかなり順調2〜3か月かかっても、実はそれほど珍しくない

という世界観になっているのが実情です。


日本の感覚からすると「信じられない遅さ」に見えますが、制度・歴史・インフラを分解していくと、「遅くならざるを得ない構造」であることが見えてきます。


――だからこそ「早めに動く」「プロに任せる」という選択肢が生まれる――


フィリピンの公的書類は、最初から「時間がかかる前提」で付き合うしかない仕組みです。


だからこそ、国際結婚、在留資格申請、帰化、運転免許切替など人生にとって重要なイベントでは、ぎりぎりで動かない数か月前から準備を始める自分や家族ではなく、現地事情に慣れたプロに任せる方が後々こんなはずじゃなかったと後悔しなくて済みます。


人が実際にお金を払っているのは、「紙一枚の印刷代」ではなく、その一枚がきちんと手元に届くまでの不安と手間をなくすため、その道のプロに任せることなのです。

 
 
 

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